8月15日に「生前贈与加算の改正について」と題して相続開始時の相続財産への持ち戻しが3年から7年に延長される内容についてお伝えしました。国の贈与に対する課税強化の姿勢が鮮明に表れた改正であり、これから生前贈与を考えておられる方には厳しい内容でした。
その一方で、同じく令和6年1月1日から変わる制度で「相続時精算課税制度」というものがあります。これは、生前贈与加算の対象となる「暦年贈与」と比較、検討される制度です。
・60歳以上の父母または祖父母が
・18歳以上の子や孫に対して
・贈与者一人につき2,500万円まで非課税で贈与出来る
制度です。そんなうまい話が…と思われた方、その通りです。ちゃんと続きがあります。
・相続時には全てが(2,500万円超えた分も含めて)贈与者(=被相続人)の相続財産に持ち戻される
・2,500万円を超えた分は一律20%の贈与税がかかる(相続時精算の結果還付が受けられる可能性あり)
・この制度を利用した場合、暦年贈与(年110万円まで非課税)は選択できなくなる(ただし贈与者一人についての選択であり、父母の場合父の贈与は相続時精算課税制度、母の贈与は暦年贈与を選択しても可)
と言った注意点もあります。
ではこの制度を利用するメリットはなんでしょうか?
・大きな財産を一度に受贈者に移せること
・相続財産に持ち戻す際、相続時ではなく「贈与時」の価値で課税されること
が挙げられます。特に2点目は今後値上がりが見込まれる財産において非常に有利になります。
説明が長くなりましたが、この制度が令和6年1月1日から見直されます。
・贈与した年につき110万円が控除される(2,500万円までのカウントから除かれる)
・贈与の対象である土地、建物が災害によって一定以上の被害を受けた場合は相続時に課税価格を再計算する
生前贈与加算が延長され暦年贈与を取り巻く環境が厳しくなる一方、相続時精算課税制度についてはかなり使い勝手が良くなるようです。まさに「アメとムチ」のような改正ですね…
スムーズな相続の準備は早いうちに始めた方が良いことは間違いありません。
ご検討の方、ぜひご相談ください。