「名義預金」をご存じでしょうか?
両親(または祖父母)が子のために内緒でせっせと貯めていた口座の通帳とハンコを
「これ、使いなさい」
と手渡す感動的なシーンを昔、ドラマで見たことがあります。でもこのあと、受け取った側にはちょっと困りごとが起きる可能性があります。
贈与税には暦年課税の基礎控除額(110万円)までは課税されないというルールがありますが、これには注意点があります。贈与は贈与者(贈る側)と受贈者(受け取る側)の当事者同士が合意した上で行う「諾成契約」です。書面による取り交わしがなくとも合意のみで成立はしますが、税務署に対しては「合意があった」という主張だけでは認められない可能性があります。日常生活に必要な物を購入する金額であれば問題ありませんが、それ以上の金銭を渡すにあたり当事者同士に合意があったことを証明する為には贈与契約書を取り交わすことが必要になってきます。
では先ほどのドラマのワンシーン、「私の知らないところでこんなに…」というセリフは非常に危険です。
年間110万円以内のお小遣いやお年玉、生活費相当であっても口座に貯める場合、その預金通帳や印鑑は受贈者自身が管理する必要があります。いくら口座名義が子や孫であっても両親や祖父母が通帳や印鑑を管理していた場合、暦年贈与とみなされず、一度に贈与したと見なされ、贈与税が課税されます。これが「名義預金」の問題です。
件のドラマで正しくは「私の知らないところでこんなに…でもこれ贈与税の課税対象になるので来年は確定申告しないといけないね…」
となります。お子さんやお孫さんのためにとコツコツ準備をされている方、くれぐれもご注意ください。